EXPLAINER

フュージョンエネルギー

「地上の太陽」と呼ばれる発電のしくみを知ろう

太陽が光るのと同じしくみで電気をつくるフュージョンエネルギー(核融合発電)。名前は聞いたことがあっても、原子力発電と何が違うのか、本当に安全なのか、いつ使えるようになるのか、詳しく知る機会は多くありません。しくみから研究の現在地、実用化に向けて整えるべき法律まで、わかりやすく解説します。

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NOTEこの解説は小林修平が個人として発信するもので、チームみらいの公式見解ではありません。2026年10月21日現在の情報を元に執筆しています。詳しくはこちら

フュージョンエネルギーとは

太陽が光り続けているのは、中心で軽い原子核どうしがくっついて、別の原子核に変わっているからです。このとき大きなエネルギーが出ます。これを地上で起こして電気をつくろうというのが、フュージョンエネルギー(核融合発電)です。[1]

地上でいちばん起こしやすいのは、水素の仲間である重水素(D)と三重水素(T)の組み合わせです。2つがくっつくとヘリウムと中性子ができ、このとき出る熱で発電します。[2][3]

原子核はどちらもプラスの電気を帯びているので、ふつうは反発しあって近づけません。そこで燃料を1億度以上に熱し、原子核と電子がばらばらになった「プラズマ」という状態にして、猛スピードでぶつけます。[2][3]

ただ、熱くするだけでは足りません。プラズマの密度と、熱を逃がさずに閉じ込めておく時間をあわせた3つの条件がそろって、はじめて取り出せるエネルギーが加熱に使うエネルギーを上回ります。[3]

重水素と三重水素が融合し、ヘリウムと中性子ができる図DTHen
重水素(D)と三重水素(T)がくっつくと、ヘリウム(He)と中性子(n)ができます。出てくるエネルギーの大部分は、速い中性子が運びます。

燃料は海から。少しで大きなエネルギー

燃料は、海水から取り出せます。重水素は海水1トンに約33グラム含まれています。三重水素は自然にはほとんどないので、海水などに含まれるリチウムに、反応で出た中性子を当てて、装置の中でつくります。[2][4]

しかも、少しの燃料で大きなエネルギーが出ます。燃料1グラムが反応しきると、石油約8トン分のエネルギーになるとされています。[2]下の道具で、場面を変えて比べてみてください。

一円玉1枚と同じ、1グラムの燃料が反応しきったときに出る熱で比べます。

フュージョンの燃料

1グラム

重水素と三重水素

石油

約8.1トン

同じ熱を出すのに要る量

※燃料1グラムの熱は、反応1回で出る17.6MeVと原子核の重さから計算し、石油1トンの熱(41.868GJ)で割っています。日本の電気の量は2023年度の発電電力量(速報、約9,854億kWh)[5]で、熱から電気に変えられる割合を33%と仮定しています。フュージョンの発電所の効率は、まだ決まっていません。

FUSION PLANT SIMULATOR

核融合発電所を運転してみよう

核融合発電所の運転員になったつもりで、発電所を動かしてみましょう。手順どおりに操作していくと、核融合で電気をつくるしくみを順番に確かめられます。

STEP 01 / 05

電流を上げて磁場をつくる

PLASMA温度

0.00億度

NET差し引きの電気

±0MW

発電 0 ・ 加熱 0

やること

「磁場」のスイッチで電磁石の電流を上げ、燃料を浮かせておく磁場のかごを先につくりましょう。

※炉の絵は、ドーナツ形の容器の中に電磁石の磁場でプラズマを閉じ込める「トカマク型」を参考にしています。[2]温度や反応の回数、電気の量は、しくみが見やすいように簡単にした仮の値です。実際の発電所で点火や発電に必要な条件は、装置によって違います。

プラズマを閉じ込める方式

1億度のプラズマは、どんな容器にも触れさせられません。磁石の力で宙に浮かせて閉じ込めるか、一瞬で押しつぶして反応させるか。主な方式を紹介します。国の戦略は、特定の方式に絞らず、多様な方式の挑戦を後押しするとしています。[1]

TOKAMAK

トカマク型

ドーナツ形の磁場にプラズマを閉じ込める

ドーナツ形の容器のまわりに強い磁石を並べ、プラズマ自体にも電流を流して、ねじれた磁場の籠をつくります。研究の歴史が最も長く、世界の大型装置の多くがこの方式です。

主な装置・企業国際共同のITER(フランス)、日欧共同のJT-60SA(茨城県那珂市)、英国のJET(2023年に運転終了)。[8][9]民間では、米国のCommonwealth Fusion Systems、日本のFASTプロジェクトを進めるStarlight Engineなど。[8][10]

HELICAL / STELLARATOR

ヘリカル型

ねじれたコイルだけで磁場の籠をつくる

らせん状にねじったコイルで、外から磁場の籠をつくります。プラズマに電流を流さなくてよいので、長い時間、安定して運転しやすいのが特徴です。

主な装置・企業核融合科学研究所の大型ヘリカル装置LHD(岐阜県土岐市)は、ヘリカル型で世界で初めてイオン温度1億2000万度を達成しました。[11]ドイツのWendelstein 7-Xは2025年に長時間運転の記録を更新しています。[12]民間ではHelical Fusionが開発を進めています。[8]

LASER / INERTIAL

レーザー型

燃料の粒にレーザーを当てて一瞬で押しつぶす

小さな燃料の粒に四方から強力なレーザーを当て、一瞬で押しつぶして高温・高密度にし、粒が飛び散る前に反応させます。磁場で閉じ込める方式とは考え方がまったく違います。

主な装置・企業米国の国立点火施設(NIF)が2022年に、投入したレーザーのエネルギーより多くのエネルギーを取り出す「点火」に成功しました。[13]日本ではEX-Fusion、Blue Laser Fusionなどが開発を進めています。[8]

OTHERS

その他の方式

磁場やプラズマの形を工夫する新しい方式

磁場の形やプラズマの動かし方を工夫して、装置を小さく、安くしようとする方式もあります。主に民間企業が挑戦しています。

主な装置・企業日本ではLINEAイノベーションなどがこうした方式に取り組んでいます。[8]

原子力発電と何が違うのか

どちらも原子核の反応からエネルギーを取り出すので、まとめて「原子力」と呼ばれることがあります。日本の法律でも、核融合は原子力基本法の「原子力」に含まれると解釈されています。[6]ただ、反応のしくみは正反対です。

核分裂で出た中性子が次々にウランを割っていく、連鎖反応の図UUUU
核分裂は、出てきた中性子が次の原子核を割り、反応がねずみ算式に広がります(連鎖反応)。
核融合は1回の反応で終わり、燃料と条件を与え続けないと次の反応が起きない図
核融合は、1回くっつけば終わりです。次の反応を呼び込まないので、燃料と熱を与え続けなければ止まります。
項目原子力発電(核分裂)フュージョン(核融合)
反応ウランなどの重い原子核が、2つに割れる重水素と三重水素の軽い原子核が、1つにくっつく
連鎖反応割れたときに出る中性子が、次の原子核を割る。連鎖を制御棒などで調整する起きない。条件を外から整え続けたときにだけ反応する[6]
止めるには制御棒などで連鎖を止める。止めた後も燃料が熱を出すので冷やし続ける燃料の供給や電源を止めれば、反応が止まる[6]
装置の中の燃料長い期間運転するための燃料を、まとめて炉に入れておくごくわずか。JETの記録的な実験で使った燃料は0.2ミリグラム[14]
高レベル放射性廃棄物使い終わった燃料から出る出ない。出る放射性廃棄物は低レベルのもの[1]
主な放射性物質ウラン、プルトニウム、核分裂でできる物質燃料の三重水素と、中性子で放射化した装置の部品[6]
日本の法律原子炉等規制法で規制原子炉に当たらず、いまは放射性同位元素等規制法(RI法)で規制[6]

なぜ安全といわれるのか

フュージョンエネルギーが「安全性が高い」といわれる理由は、主に3つあります。一方で、放射性物質をまったく扱わないわけではありません。良い点と、残る課題を分けて見てみましょう。

安全性が高いといわれる理由

暴走しない

連鎖反応が起きないので、反応が勝手に広がることはありません。燃料の供給や電源を止めれば、反応は止まります。[6]

装置の中の燃料がごくわずか

一度に反応させる燃料は、ごく少量です。英国のJETが2024年に発表した記録的な実験でも、使った燃料は0.2ミリグラムでした。[14]

高レベル放射性廃棄物が出ない

原子力発電のような高レベル放射性廃棄物は出ず、出る放射性廃棄物は低レベルのものだけで、従来の技術で処分できるとされています。[1]

残る課題

三重水素(トリチウム)の閉じ込め

燃料の三重水素は放射性物質です。原子力規制委員会は、三重水素を外に漏らさない「閉じ込め」を最も重要な論点に挙げています。[15]

放射化した部品の扱い

反応で出る中性子が当たると、装置の部品が放射線を出すようになります(放射化)。こうした物の保管や処分の体制を整える必要があります。[6][8]

大型装置としての安全

放射化したちり(ダスト)への備えや、強い磁石の力への備えなど、大きな装置ならではの安全対策も求められます。[6]

研究はどこまで進んだか

ここ数年で、研究は大きく進みました。長年の目標だった「投入したより多くのエネルギーを取り出す」ことが実験で確かめられ、プラズマを長く保つ記録も次々に更新されています。主な出来事を並べました。

14件

  1. 研究

    米国NIFが「点火」に成功

    レーザーで2.05MJを投入し、3.15MJのエネルギーを取り出しました。投入したより多くのエネルギーが出たのは世界で初めてです。[13]

  2. 研究日本

    JT-60SAが初めてプラズマを生成

    日本と欧州が茨城県那珂市に建設した、世界最大の超伝導トカマク装置です。12月に運転開始の式典が開かれました。[16]

  3. 研究

    英国JETが最後の実験で世界記録

    約5秒間で69MJのエネルギーを出しました。使った燃料は0.2ミリグラム。JETは2023年末に運転を終えています。[14]

  4. 研究

    ITERが新しい計画を公表

    研究運転の開始を2034年、重水素と三重水素を使う運転の開始を2039年としました。[17]

  5. 研究

    中国EASTが1066秒の運転

    閉じ込めの性能が高い状態を1066秒保ちました。[18]

  6. 研究

    フランスWESTが1337秒の運転

    トカマク型でプラズマを約22分間保ち、長さの記録を更新しました。[19]

  7. 民間

    NIFが8.6MJで記録を更新/Starlight Engine設立

    NIFは投入したレーザーの約4倍のエネルギーを取り出しました。[13]日本では、2030年代の発電実証を目指すFASTプロジェクトの推進会社が設立されました。[10]

  8. 研究

    ドイツWendelstein 7-Xが記録

    ヘリカル型(ステラレータ)で、長時間運転での性能の指標で世界最高の値を43秒間保ちました。[12]

  9. 政策日本

    国の戦略を改定、2030年代の発電実証へ/GoogleがCFSと電力購入契約

    日本政府が目標を前倒ししました。[1]米国ではGoogleが、CFSが建設予定の発電所ARCから電力を買う契約を結びました。[20]

  10. 民間

    米国Helionが発電所の建設に着手

    Microsoftに電気を売る契約を結んでいる発電所の建設を始めました。[21]

  11. 民間

    中国BESTの建設が進む/Helical Fusionが実証装置の建設へ

    中国は2027年末の完成を目指す装置の主要部品を据え付けました。[22]日本のHelical Fusionは、最終実証装置の建設への着手を決めました。[23]

  12. 政策日本

    社会実装に向けた取組の在り方

    規制、立地、標準化、放射化物の処分、輸出管理など、実用化までに整えることを国の有識者会議がまとめました。[9]

  13. 研究

    NIFが11回目の点火

    点火は一度きりの成功ではなく、繰り返し再現できるものになっています。[13]

  14. 政策日本

    官民投資ロードマップ

    2040年度までに官民で3.1兆円の投資を見込み、世界の市場の約3割を獲得する目標を掲げました。[24]

世界の実験炉

  • 運転中
  • 建設中
  • 計画中

運転中トカマク型

JT-60SA

日本・茨城県那珂市日本と欧州の共同

  1. 2023年10月初めてプラズマを生成
  2. 2023年12月運転開始の式典

世界最大の超伝導トカマク装置です。ITERや、その先の発電炉に向けた研究を支えます。[16]

建設中トカマク型

BEST

中国・合肥中国

  1. 2023年建設開始
  2. 2027年末完成予定

重水素と三重水素を燃やす実証を目指す実験装置です。[25][22]

建設中トカマク型

ITER

フランス・サン=ポール=レ=デュランス国際共同(日本も参加)

  1. 2010年建設開始
  2. 2034年研究運転を開始(目標)
  3. 2039年重水素と三重水素の運転を開始(目標)

発電はせず、大きなエネルギーを取り出せることを確かめる実験炉です。[26][17]

運転中ヘリカル型(ステラレータ)

Wendelstein 7-X

ドイツ・グライフスヴァルトドイツ

  1. 2025年長時間運転での性能の指標で世界最高の値

ヘリカル型の代表的な研究装置です。長い時間、安定して運転できることを示しています。[12]

計画中トカマク型

STEP

英国・ノッティンガムシャー州ウェスト・バートン英国

  1. 2030年建設開始(見込み)
  2. 2040年完成(目標)

石炭火力発電所の跡地に建てる、英国の原型の発電所です。[27][28]

建設中トカマク型

SPARC

米国・マサチューセッツ州デベンス米国・民間(CFS)

  1. 2026年8月約8割が完成

発電所ARCの前に、投入したより多くのエネルギーを取り出せるかを確かめる装置です。[29]

計画中トカマク型

ARC

米国・バージニア州チェスターフィールド郡米国・民間(CFS)

  1. 2030年代前半送電を開始(目標)

出力40万kWの発電所です。[29]Googleが、このうち20万kWの電気を買う契約を結んでいます。[20]

建設中その他の方式

Orion(Helion)

米国・ワシントン州マラガ米国・民間(Helion)

  1. 2025年7月建設開始
  2. 2028年送電を開始(目標)

Microsoftと、2028年に電気を届ける契約を結んでいます。[21][30]

運転中レーザー型

NIF(国立点火施設)

米国・カリフォルニア州リバモア米国

  1. 2022年12月世界で初めて点火に成功
  2. 2025年4月8.6MJで記録を更新
  3. 2026年6月11回目の点火

投入したレーザーより多くのエネルギーを取り出すことを、くり返し確かめています。発電用ではなく研究用の施設です。[13]

※主な装置を選んで載せています。時期はそれぞれの発表時点の目標です。

法律はどうなっているか

政府は2030年代の発電実証を目標に掲げ[1]、2026年7月には2040年度までに官民で3.1兆円の投資を見込むロードマップも示しました。[24]新しい技術を世に出すには、何をどこまで守れば安全といえるのか、ルールを決める必要があります。ルールが厳しすぎれば開発が進まず、あいまいなままでは事業者も地域の人も判断できません。いまの日本の法律での扱いと、海外の動きを整理します。

日本のいま

日本の原子力基本法は、核融合も「原子力」に含むと解釈されています。ただ、燃料の三重水素は法律上の「核燃料物質」に当たらないので、核融合の装置は「原子炉」には当たりません。このため、原子力発電所を規制する原子炉等規制法の対象外です。[6][31]

いまのJT-60SAやLHDなどの研究装置は、放射性同位元素等規制法(RI法)の「放射線発生装置」として規制されています。ただし、この区分は重水素どうしの反応だけを行う装置に限られていて、重水素と三重水素を使う装置のための基準はまだありません。[6][32][33]

国の有識者会議は、いまの装置と同じ程度のリスクであれば当面はRI法で規制を続け、リスクの大きさに応じて規制の強さを変える「グレーデッドアプローチ」をとる考え方を示しました。発電の実証に使う原型炉については、将来、法体系の在り方も含めて検討が必要としています。[6]原子力規制委員会も開発事業者との意見交換を重ねています。[33][15]

海外の動き

英国
2023年のエネルギー法で、核融合施設を原子力施設の許可制度から外しました。原子力の規制機関ではなく、安全衛生庁と環境庁が規制します。[34][35]
米国
2024年の法律で「核融合装置」を定義し、原子炉ではなく粒子加速器と同じ枠組みで規制することを明確にしました。原子力規制委員会が2026年2月に規則案を公表しています。[36]
ドイツ
核融合施設を、放射線防護法のもとで「電離放射線を発生させる施設」と位置づける改正案を、2026年10月に連邦議会で審議しはじめました。[37]
EU
2026年3月に規制当局の作業部会を設け、核融合に専用の法的な枠組みが必要かを2027年末までに勧告するとしています。[38]
フランス
ITERは、フランスの原子力施設の制度のもとで設置が許可されています。[39]

※英国・米国・ドイツは、核融合を原子力発電と同じ規制にはせず、放射線を扱う施設として、リスクに見合った規制をする方向です。

推進のために整えるべき法律

実用化に向けて、どんな法律を改正し、何を新しく定めるべきか。国の有識者会議の資料などで挙がっている論点を整理しました。どの手当てがよいかは、安全の確保と開発のスピードのどちらに重きを置くかによっても変わります。

安全規制の枠組み

いまの課題

重水素と三重水素を使う装置の基準がありません。[33]RI法には、原子炉等規制法にあるような設計や工事計画の認可、事業者の経理的な基盤の審査がなく、耐震の基準も一般の建物と同じです。[6]

考えられる手当て

RI法を改正して核融合の装置の区分と基準を設ける、核融合に専用の規制法を新しくつくる、などの選択肢があります。原子力規制委員会は、事故のときの被ばくの評価をもとに規制の強さを分ける考え方を検討しています。[15]

推進の基本となる法律

いまの課題

原子力基本法には、核融合についての明文の規定がありません。国の役割や、どの法律で規制するかの関係も整理されていません。[6]

考えられる手当て

核融合の推進の基本となる法律を新しくつくり、国の役割や、原子力基本法・RI法との関係を整理することが考えられます。国の戦略も、法制度の面での強化が必要としています。[1]

立地と地域の理解

いまの課題

どこに発電所を建てられるかは、規制の中身で変わります。国の有識者会議は、立地に影響する規制の方針を、できるだけ早く示すことが望ましいとしています。[9]

考えられる手当て

立地の手続きや、地域への説明に必要な情報の整理を法律や指針で定めることが考えられます。安全性だけでなく、地域への経済効果も含めた透明な情報公開が必要だという指摘もあります。[40]

事故のときの損害賠償

いまの課題

原子力損害賠償法は「原子炉の運転等」を対象にしており、原子炉に当たらない核融合の装置は対象外と考えられます。ただ、政府が明確に示した解釈は見当たりません。[41]

考えられる手当て

一般の民事の責任で足りるとする考え方と、責任の所在や保険のしくみを法律で明確にすべきだという考え方がありえます。

研究開発と投資の支援

いまの課題

国の研究開発法人NEDOの支援の対象に核融合が入っていないとの指摘が、産業界から出ています。[42]

考えられる手当て

国の成長戦略には、NEDOを念頭に資金供給の機能を強めることが盛り込まれました。[8]経済産業省は、NEDOによる資金供給の強化について、法律の改正に限らずいろいろな方法があるとしています。[42]米国のように、企業が提案して国と合意した目標の達成に応じて国が支払うマイルストーン型の支援も始まっています。[43][8][42]

放射化した物の処分

いまの課題

中性子で放射化した部品は、放射能が減るまで保管したうえで、低レベルの放射性廃棄物として処分することになります。[6]その保管や処分の体制を整えることが求められています。[9]

考えられる手当て

処分の責任や方法を、既存の制度に位置づけるか、新しく定めることが考えられます。

技術流出と国際標準

いまの課題

三重水素や関連する装置は、すでに輸出の管理の対象です。[6]一方で、産業化や技術の囲い込みをめぐる各国の競争はすでに始まっており、国の戦略は国際標準づくりへの取り組みを強めるとしています。[1]

考えられる手当て

安全保障の観点からの技術流出の防止と、知的財産の保護・活用、国際標準づくりへの参加を進めることが挙げられています。[9]

※論点は2026年10月時点に公表されている国の有識者会議の資料などをもとに整理したもので、網羅的なものではありません。

INSIGHT

小林修平

チームみらい 衆議院議員

このたび、衆議院の経済産業委員会の委員を務めることになりました。経済産業委員会は、産業や中小企業の政策とあわせて、エネルギーを安定して確保するための政策も担当する委員会です。その一員として、これからの日本のエネルギーを支える技術のひとつ、フュージョンエネルギーについて、この記事にまとめました。

「フュージョンエネルギー」「地上に太陽をつくる」と聞いても、正直なところ、なんだかピンとこない方も多いのではないでしょうか。遠い未来の話のようにも、SFの話のようにも聞こえるかもしれません。「核融合」という言葉から、危ないのではないかと不安になる方もいるでしょう。安全性については、この記事でも詳しく取り上げています。実はこの技術は、私たちの暮らしを支えるエネルギーをこの先どう確保していくのかという、とても身近な問題とつながっています。


いま日本は、使っているエネルギーの大半を海外からの輸入に頼っています。国内でまかなえているのは1割台にとどまり、世界の情勢や為替が動くたびに、電気代やガソリン代が大きく揺れてきました。

発電の主力は、石炭や天然ガスを燃やす火力発電です。電気の使われ方に合わせて出力を上げ下げしやすく、需要の変化に応えられるのが大きな強みです。ただ、化石燃料は埋蔵量に限りのある資源で、しかもその多くを輸入しています。気候変動に向き合うために、二酸化炭素の排出を減らしていく脱炭素も避けては通れません。

原子力発電は、安定して電気をつくれ、発電のときに二酸化炭素を出さない電源です。私は、安全を大前提に、これからも活用していく必要があると考えています。一方で、発電のあとに出る高レベル放射性廃棄物をどこでどう処分するのかという課題は、いまも残ったままです。

太陽光や風力といった再生可能エネルギーも、もっと広げていくべきです。けれど、天候や時間帯によって発電量が変わることや、適した土地が限られることもあり、それだけで日本の需要をまかなうのは簡単ではありません。データセンターや半導体工場が増え、電気の需要はこれから伸びていくとも見込まれています。

こうした電源それぞれの特徴を、実際に手を動かして体感できる教材として、経済産業省資源エネルギー庁が小中学生向けの学習コンテンツとして公開している「電力バランスゲーム」があります。刻々と変わる電気の使われ方に合わせて発電所を動かし、需要と供給のバランスを保ちながら街に電気を届けていきます。これがとても勉強になるのですが、大人が遊んでもなかなか難しい。電気を途切れさせずに届け続けることがいかに大変か、身をもって感じられます。ぜひ一度遊んでみてください。


どの電源にも強みと課題がある。そこで新しい選択肢として注目されているのがフュージョンエネルギー(核融合)です。燃料の重水素は、海の水に含まれています。割合はわずかでも、地球の海全体では膨大な量になり、ほぼ尽きることがありません。発電のときに二酸化炭素を出さず、高レベル放射性廃棄物も出ません。そして、少しの燃料で大きなエネルギーを生み出せます。輸入への依存、脱炭素、廃棄物。日本のエネルギーが抱える課題に、まとめて答えを出せるかもしれない技術です。この記事を書きながら、改めてその可能性の大きさにわくわくしています。

核融合は長いあいだ、研究者のあいだでこんな冗談が語られてきました。

「Fusion is 30 years away — and always will be.」

「核融合は30年先の技術。そして、それはいつまでも変わらない」

それがいま、国が2030年代の発電実証を目標に掲げ、官民で大きな投資を見込むロードマップが示されるところまで来ています。ここまで来られたのは、何十年にもわたって地道に研究を積み重ねてこられた方々がいたからこそです。

しかも、これは日本が強みを持つ分野です。国際共同で建設が進むITERでは、日本は主要な参加国の一つとして、プラズマを閉じ込める超伝導コイルなどの中心的な機器を担ってきました。国内では、日本と欧州が共同でつくった世界最大の超伝導トカマク装置、JT-60SAが動き出しています。長年成果を挙げてきた研究者の皆さん、こうした技術を支えるものづくりの現場、そして新しく挑戦を始めたスタートアップ。日本には、世界と肩を並べて戦える土台がすでにあります。


私は、この挑戦を全力で応援していきたいと考えています。

研究者やスタートアップが安心して挑戦を続けられるよう、息の長い研究開発への支援や、次の世代を担う人材の育成が欠かせません。安全をきちんと確保しながら、事業者が見通しを持って計画を立てられるルールを、早い段階で整えていくことも大切です。国の方針や制度が開発のスピードに追いつき、挑戦する人の背中を押せるよう、国会の場から取り組んでいきます。

技術の中身を多くの方に知っていただくことも、応援のひとつだと思っています。核融合がどんなしくみで、いまどこまで進んでいるのか。一人でも多くの方に知っていただき、これからのエネルギーを一緒に考えるきっかけになれば嬉しいです。

地上に太陽をつくる。そんな壮大な挑戦が、私たちの暮らしを支える日が来ることを信じて、これからも研究の前進を応援してまいります。

免責

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発信の主体
この解説ページは、小林修平が個人として作成し、発信するものです。所属するチームみらいの公式見解ではなく、党の政策や方針を示すものでもありません。
情報の時点
記載の内容は2026年10月21日時点で確認した情報にもとづいています。フュージョンエネルギーの研究開発や政策、法整備の議論は日々動いており、公開後の変化を反映していない場合があります。内容は予告なく変更、追記、削除することがあります。
正確性について
正確性と中立性に配慮して作成し、根拠とした資料は参考文献に示していますが、内容の正確さ、完全さ、最新性を保証するものではありません。各計画の時期は発表時点の目標であり、実現を保証するものではありません。
運転シミュレーターと燃料の重さ比べについて
核融合発電所の運転シミュレーターは、しくみを体験してもらうための簡易なもので、温度や反応の回数、電気の量は実際とは違います。操作の内容は保存も送信もしません。「燃料の重さを比べる」道具は、しくみを理解するための概算です。どちらも、実際の装置の性能や発電の効率を示すものではありません。
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参考文献

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  1. フュージョンエネルギー・イノベーション戦略(統合イノベーション戦略推進会議、2025年6月4日改定)
  2. フュージョンエネルギーの基礎及び技術的に取り組むテーマ(量子科学技術研究開発機構、文部科学省 会議資料、2023年6月28日)
  3. Harnessing Energy from Nuclear Fusion(IAEA、2019年8月)
  4. 実際の核融合炉と発電の仕組み:核融合発電 基本のキ(2)(MONOist、2024年10月17日)
  5. 令和5年度(2023年度)エネルギー需給実績を取りまとめました(速報)(経済産業省、2024年11月22日)
  6. フュージョンエネルギーの実現に向けた安全確保の基本的な考え方(内閣府 有識者会議「核融合戦略」、2025年3月25日)
  7. Disruption Mitigation System(US ITER、米国オークリッジ国立研究所)
  8. フュージョンエネルギーに関する政策の検討状況について(文部科学省、2026年9月25日)
  9. フュージョンエネルギーの社会実装に向けた取組の在り方(内閣府 有識者会議「核融合戦略」、2026年4月8日)
  10. 核融合エネルギー実証計画を推進する新会社 プロジェクト全体を統括(MONOist、2025年4月17日)
  11. 大型ヘリカル装置における重水素実験終了後の安全管理体制等について(核融合科学研究所、岐阜県 第12回安全監視委員会 資料5、2023年3月22日)
  12. Wendelstein 7-X sets new performance records(マックス・プランク・プラズマ物理研究所、2025年6月3日)
  13. Achieving Fusion Ignition(ローレンス・リバモア国立研究所)
  14. JET's final tritium experiments yield new fusion energy record(英国原子力公社、2024年2月8日)
  15. フュージョン装置の開発を進める事業者等との意見交換会合の状況(2回目)(原子力規制庁、2026年3月25日)
  16. 盛山大臣がJT-60SA運転開始記念式典に出席(文部科学省、2023年12月1日)
  17. Baseline press conference summary(ITER機構、2024年7月3日)
  18. 'Artificial Sun' Tops the '25 List of Leading News for S&T Advances of China(Bulletin of the Chinese Academy of Sciences、2026年2月14日)
  19. WEST sets a new plasma duration record(CEA-IRFM、2025年2月19日)
  20. Google and Commonwealth Fusion Systems sign strategic partnership(Commonwealth Fusion Systems、2025年6月30日)
  21. Helion Secures Land and Begins Building on the Site of World's First Fusion Power Plant(Helion、2025年7月30日)
  22. Key Component Installed in China's Compact Fusion Device, BEST(中国科学院、2025年10月9日)
  23. 核融合発電の技術開発で日本がリード、最終実証装置の建設に着手(MONOist、2025年10月29日)
  24. Public-Private Investment Roadmap for Fusion Energy under the 17 Strategic Fields(日本成長戦略本部、2026年7月21日、英語仮訳)
  25. China launches new tokamak(Nuclear Engineering International、2025年8月7日)
  26. Frequently Asked Questions(ITER機構)
  27. From fossil fuels to fusion: West Burton STEP fusion plant receives multi-billion pound investment(イースト・ミッドランズ合同行政機構、2025年6月10日)
  28. Kier Nuvia JV wins £200m contract for fusion energy plant(Construction Management、2026年3月17日)
  29. SPARC progress, DOE Milestone approvals reflect CFS power plant maturity(Commonwealth Fusion Systems、2026年8月5日)
  30. Helion announces world's first fusion PPA with Microsoft(Helion、2023年5月10日)
  31. 原子力基本法(e-Gov法令検索)
  32. 放射性同位元素等の規制に関する法律(e-Gov法令検索)
  33. 原子力規制庁におけるフュージョン装置の安全規制に係る取組(原子力規制庁、内閣府 社会実装タスクフォース 第3回 資料3、2025年11月)
  34. Energy Act 2023, section 156(legislation.gov.uk)
  35. Fusion Regulation Landscape(英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省)
  36. Regulatory Framework for Fusion Machines, Proposed rule(米国原子力規制委員会、Federal Register、2026年2月26日)
  37. Modernisierung des Strahlenschutzrechts erörtert(ドイツ連邦議会、2026年10月)
  38. New EU Task Force on Fusion Energy(欧州委員会、2026年5月27日)
  39. France gives the go-ahead for ITER fusion reactor(NS Energy、2012年11月19日)
  40. フュージョンエネルギーをめぐる主な動向(参議院 立法と調査 479号、2025年10月28日)
  41. 原子力損害の賠償に関する法律(e-Gov法令検索)
  42. 社会実装タスクフォース 第6回 議事要旨(内閣府、2026年3月16日)
  43. U.S. Department of Energy Announces Selectees for $107 Million Fusion Innovation Research Engine Collaboratives, and Progress in Milestone Program Inspired by NASA(米国エネルギー省、2025年1月16日)

※各資料の内容は2026年10月時点で確認したものです。