EXPLAINER

デバンキング

海外の売上と、銀行の入金確認のいまを知ろう

Steamなど海外のプラットフォームで売れたゲームの売上について、国内の銀行が入金を受け入れなかった例が報じられています。銀行はなぜ送金を確かめ、入金を見送ることがあるのか。その法的な根拠や金融庁の考え方、論点、作り手にできることまで、銀行と作り手の双方の事情を踏まえて解説します。

LAST UPDATE

NOTEこの解説は小林修平が個人として発信するもので、チームみらいの公式見解ではありません。2026年11月1日現在の情報を元に執筆しています。詳しくはこちら

WHAT IS HAPPENING

いま何が起きているのか

Steamなど海外のプラットフォームで売れたゲームの売上を、国内の銀行が入金せずに送り返す例が、2026年に入って報じられています。

報じられている例の多くは、成人向けの作品を扱う作り手からのものです。

デバンキング
口座を閉じる・開かせないなど、銀行のサービスから外すこと。[1]
謝絶
金融機関が取引を断ること。口座開設・解約・送金の制限を含みます。[2]
この記事の例
口座はそのままで、特定の入金だけを断られる「入金の謝絶」が中心です。[3]
  1. 1

    資料を求められる

    送金元との関係や、販売している作品の資料。[4][5]

  2. 2

    銀行が確認する

    マネロン対策として、送金の中身を確かめます。[6]

  3. 3

    入金が見送られる

    お金は送金元へ戻ります。判断基準は開示されていません。[7]

※報道で確かめられる例は数件で、どれも当事者の発信がもとです。銀行の側の説明は公表されていません。成人向けでない作品が対象になった例や、事業用の口座に切り替えて受け取れた例もあります。[5][8]

MONEY FLOW

売上が届くまでの流れ

売上は、いくつもの会社と銀行を通って作り手の口座に届きます。

国内の銀行では、口座に入れる前に、作り手とのあいだで送金の目的などを確かめるやりとりがあります。

  1. プレイヤー
  2. Steam
  3. 中継銀行
  4. 国内の銀行
  5. 作り手

READY

売上は、Steamと2つの銀行を経て届きます

プレイヤーの支払いはSteamに集まり、米ドルの国際送金で、中継銀行を通って国内の銀行へ届きます。国内の銀行は、送金の中身を確かめてから作り手の口座に入れます。

※流れは、公表されている資料と報道をもとに簡単にしたものです。プラットフォームや契約の形、銀行によって、手続きの順番や中身は変わります。

WHY

銀行はなぜ送金を確かめるのか

銀行は、個々の判断の理由を公にしていません。

公表資料からわかる、銀行が送金を確かめる理由と、謝絶につながりうる理由を並べます。

銀行が送金を確かめる理由

  • 確認の目的

    犯罪者を紛れ込ませないため

    確認に応じてもらえないときは、取引を断る場合があるとしています。[6]

  • 不備の代償

    制裁金や、海外との取引停止

    対策の不備で、外国の当局から巨額の制裁金を科された例があります。[12]

  • 国際審査

    2028年に、日本への国際審査

    国際基準をつくる機関(FATF)の審査が予定されています。[13]

入金が謝絶される理由として考えられること

  • 理由 1

    送金の確認が尽くせない

    確かめきれない取引は、断ることも検討するよう求められています。[12]

  • 理由 2

    預金規定に照らした判断

    公序良俗に反するおそれや、口座の使い道が理由になりえます。[14][8]

  • 理由 3

    海外の取引相手の基準

    海外の銀行やカード会社の基準が影響しているという見方があります。[9]

理由をくわしく読む

銀行は、マネー・ローンダリング(犯罪で得たお金の出どころを隠すこと)やテロ資金の対策として、顧客や取引の危険の大きさに応じて確認を厚くする「リスクベース・アプローチ」を求められています。必要な情報を顧客から得られないなど、十分な顧客管理ができないと判断した顧客や取引については、取引を断ることも含めて検討するよう、金融庁のガイドラインに書かれています。[12]海外からの事業の売上の送金は、送金元との関係や取引の中身を確かめる対象になりやすく、報じられた例でも、契約書や販売している作品の資料が求められています。[4][5]

銀行の預金規定には、預金が「法令や公序良俗に反する行為に利用され、またはそのおそれがあると認められるとき」は受け入れを断る場合がある、といった定めが置かれています。資料の提出を求めたうえで、マネロンなどのおそれがあると認めた場合に、入金や振込などの取引を制限できるとも定めています。[14]日本の法令に沿って販売されている成人向けの作品は違法ではありません。一方で、当事者の説明によると、銀行が預金規定の「公序良俗に反する資金」や「事業資金の取引」に関する項目を挙げた例があります。[5]公序良俗に当たるかどうかの基準は公表されておらず、銀行の側の考えも明らかではありません。

海外の取引相手の目もあります。マネロン対策の不備をきっかけに、外国の当局から巨額の制裁金を科されたり、海外の銀行から送金の取引契約を切られたりする例があることを、金融庁のガイドラインも挙げています。[12]2025年には、Steamが、カードネットワークや銀行の基準を理由に一部の成人向けゲームの販売をやめました。[9]一方で、カード会社のMastercardは、ゲームのプラットフォームに制限を求めたことはないとする声明を出しており、誰の基準がどこまで影響しているのかは、はっきりしていません。[15]

作品の中身のほかに、口座の使い道が問われた例もあります。全年齢の新作の発売を延期した開発者は、事業の売上をその口座で受け取っていたことも規約に反するとされ、事業の資金を扱える別の銀行の口座を開いて解決したと報告しています。[8]

判断は銀行によって分かれているようです。あるサークルは、ある銀行では受け取れなかった売上を、別の銀行では受け取れたと伝えています。[16]一方で、2つの銀行で続けて同じ結果になった例もあります。[5]

LEGAL BASIS

断る法的な根拠はあるのか

銀行が取引を断ることを禁じる法律は、日本にはありません。そのうえで金融庁は、マネロン対策を名目にした「合理的な理由のない謝絶」をしないよう、金融機関に求めています。

  1. 原則契約の自由誰と取引するかは、当事者が決められる
  2. 法律犯罪収益移転防止法確認に応じなければ、取引を拒める(第5条)
  3. 指針金融庁のガイドライン合理的な理由なく謝絶しないよう求める
  4. 契約預金規定公序良俗やマネロンのおそれで、受け入れを断れる

金融庁の取り組み

  1. 2020年10月

    顧客に、より丁寧な説明を

    顧客の情報を確かめ直す際に苦情が寄せられたことから、業界団体を通じて、顧客により一層丁寧な説明をするよう金融機関に求めました。[17]

  2. 2023年6月

    業種だけで一律に断ることを指摘

    金融機関の取り組みを点検した年次の報告書で、国籍や業種など一つの要素だけを理由に一律に謝絶することを、取り組みの遅れとして挙げ、改善を促しました。[17]

  3. 2026年3月

    合理的な理由なく謝絶しない

    改正後のガイドラインでも、マネロン対策の名目で合理的な理由なく謝絶しないことを求めています。FAQでは、扱う商品やサービスだけで一律に危険度が高いと判断せず、顧客の事業や取引の中身を踏まえるよう求めています。[12][2]

  4. 2026年7月

    過剰な対応による「金融排除」を防ぐ

    年次の報告書で、危険度に応じた対応は過剰な対応による金融排除を防ぐことにもつながると説明し、金融機関から謝絶の件数を集め始めました。検査などを通じて対策の実効性を確かめ、ガイドラインも見直していくとしています。[13]

4つの層と金融庁の考え方をくわしく読む

誰とどんな取引をするかは、原則として当事者が自由に決められます。金融庁のガイドラインのFAQも、反社会的勢力などとわかった場合の謝絶について「契約自由の原則と社内規定、法令等に沿って」行うと書いています。[2]

犯罪収益移転防止法は、銀行に取引のときの本人確認などを義務づけ、顧客が確認に応じないときは、応じるまで取引を拒めると定めています(第5条)。[18]

金融庁のガイドラインは、十分な顧客管理ができない顧客や取引は謝絶も含めて検討するよう求める一方、「マネロン・テロ資金供与対策の名目で合理的な理由なく謝絶等を行わないこと」も求めています。[12]「合理的な理由」があるかは、預金規定や顧客の事情に照らして個別具体的に丁寧に検討し、調査の過程と結果を残すべきだとしています。[2]ガイドラインは法律そのものではなく、金融機関に求める対応を示し、監督の目線とするものです。金融庁は、検査などを通じて対策の実効性を確かめています。[13]

預金規定は銀行と預金者のあいだの契約で、法令や公序良俗に反する行為に使われるおそれ、マネロンなどのおそれがあると認めたときに、受け入れを断ったり、取引を制限したり、口座を解約したりできると定めています。[14]民法は公序良俗に反する法律行為を無効と定めていますが(第90条)、[19]預金規定の「公序良俗」は銀行が自ら定める契約の条件で、何がこれに当たるのかの基準は公表されていません。

金融庁は2023年の報告書で、国籍や業種など一つの要素だけを理由に一律に謝絶することを取り組みの遅れとして挙げ、[17]2026年のFAQでも、扱う商品やサービスだけで一律に危険度が高いと判断せず、顧客の事業の形や取引の中身を踏まえるよう求めています。[2]2026年7月の報告書では、危険の低い分野での過剰な対応による金融排除を防ぐ考え方も示しました。[13]

THE CORE

論点はどこにあるのか

銀行には犯罪のお金を通さない責任があり、作り手には合法な仕事の対価を受け取る必要があります。

両者をどう両立させるか、6つの論点を並べます。押すと開きます。

判断の説明謝絶の理由を、どこまで示すべきか

いまの課題

報じられた例では、銀行は「総合的な判断」とし、具体的な判断基準や検討の中身は開示できないと回答しています。[7]受け取る側からは、何を改めればよいのかがわかりにくいという声があります。

考えられる方向

英国では、2026年4月以降に結んだ契約について、口座を閉じるときに理由を書面で示すよう求めるルールが始まりました。ただし、金融犯罪の法令に従う場合などは例外です。[20]理由を詳しく示すほど、犯罪をたくらむ人に確認のしくみを知られるおそれもあり、説明の範囲をどう線引きするかが論点になります。

業種と個別の判断業種を考慮することと、一律に断ることの線引き

いまの課題

あるサークルは、担当者から口頭で、成人向けのゲームを扱っていることが理由と伝えられたとしています。[16]一方、ある銀行は文書の回答で、業種全般を否定する趣旨ではなく、個別に確認した結果だとしています。[7]

考えられる方向

金融庁は、国籍や業種など一つの要素だけを理由に一律に断ることを、取り組みの遅れとして挙げてきました。[17]同時に、業種は危険度を評価する要素の一つでもあります。業種をどこまで考慮し、どこからを個々の取引の判断とするかが論点になります。

実態の把握件数や理由の全体像は、まだわからない

いまの課題

報道で確かめられる例は数件にとどまり、全体の件数を示す公的な数字はまだありません。事例が、まだ行政に十分届いていない可能性もあります。

考えられる方向

金融庁は、2026年3月末を基準とする金融機関からの報告に、口座開設と送金などの謝絶の件数を加えました。[13]金融サービス利用者相談室に寄せられた情報も、関係する部署に伝えられ、金融行政の参考にされます。[21]事例を、行政が検討に使えるかたちで集められるかが論点になります。

受け取れない売上と税入金が無くても、申告が要る場合の扱い

いまの課題

海外の売上を受け取れなくても、税の上では売上として計上される場合があり、当事者からは納税の負担を指摘する声が出ています。[4][3]

考えられる方向

受け取れなかった売上をどう扱うかは、契約や返金の状況によって変わります。一律の扱いを示す公的な案内は、確かめた範囲では見当たらず、税理士などの専門家への相談が前提になります。

決済の網と、表現の流通決済事業者の基準と、合法な作品の販売との関係

いまの課題

Steamは、決済代行業者やカードネットワーク、銀行の基準を理由に、一部の成人向けゲームの販売をやめました。[9]カード会社の側は、制限を求めたことはないとしています。[15]

考えられる方向

民間の会社が取引の相手や条件を選ぶ自由と、合法な作品が流通することとを、どう両立させるかが論点です。どの段階の、誰の基準が判断を左右しているのかを明らかにすることが、議論の出発点になります。

銀行が負うリスク対策の不備は、銀行の経営に響く

いまの課題

マネロン対策の不備をきっかけに、外国の当局から巨額の制裁金を科されたり、海外の銀行から取引を切られたりする例があります。海外送金を扱う銀行は、外国の当局の目も踏まえた対応を求められています。[12]

考えられる方向

金融庁は、危険度に応じた対応が、危険の低い分野での過剰な対応による金融排除を防ぐことにもつながるとしています。[13]米国では、合法な事業活動を理由とした口座の解約を、当局が銀行に迫ることを禁じる規則ができました。[22]銀行が慎重であるべき場面と、取引を続けられる場面とを、どう見分けるかが論点になります。

※論点は2026年11月時点に公表されている資料と報道、当事者の発信をもとに整理したもので、網羅的なものではありません。

WHAT YOU CAN DO

クリエイターにできること

銀行の確認に備えてできることと、入金が謝絶されたときの相談先です。

確認に備える

  1. 入金の裏づけを用意する

    Steamの販売契約などを示せるように。[10]

  2. 事業に合った口座を使う

    事業の資金を扱える、米ドルの国際送金を受け取れる口座に。[8][10]

  3. 銀行からの確認に答える

    応じないと、取引を断られることがあります。[6][18]

謝絶されたら

  1. やりとりの記録を残す

    支払い履歴、通知、出した資料、契約書など。[16]

  2. 判断の根拠を尋ねる

    どの規定にもとづくかを書面で。[7]

  3. 全国銀行協会に相談する

    相談室と、無料のあっせん委員会があります。[23]

  4. 金融庁に情報を寄せる

    ウェブの窓口から24時間受け付けています。寄せられた情報は金融行政の参考にされます。[21]

    インターネット情報受付窓口(金融庁)
  5. 税理士・弁護士に相談する

    受け取れない売上の申告や、根拠の確認に。[7]

INSIGHT

小林修平

チームみらい 衆議院議員

ここまで、デバンキング問題の経緯と現状を解説してきました。私も普段から Steam でゲームを買って遊んでいるプレイヤーのひとりです。自分が買ったゲームの売上が作り手にきちんと届くのかどうかは、利用者として他人事ではなく、この問題にはとても関心を持っています。

余談ですが、個人的にSteamおすすめのゲームは「Slay the Spire」「Factorio」「Vampire Survivors」「NEEDY GIRL OVERDOSE」などなど。いずれも無限に時間が溶けるので、最近は全然遊べていないのが悩みです...

表現の自由は、チームみらいのマニフェストに掲げているテーマではなく、私が個人として取り組んでいきたいテーマです。ずっとオタクとして育ってきた一人として、ゲームやアニメ、漫画、二次創作をはじめとする日本のコンテンツと、それを生み出すクリエイターが自由に表現できる文化や環境が維持されるように、守っていきたいと考えています。このデバンキング問題も含む表現の自由をめぐる諸課題には、一人の議員として本気で取り組んでいきます。


まず確認しておきたいのは、ここで話題になっているのが合法的に販売されている作品だということです。Steamは成人向けゲームにも内容の申告と審査の仕組みを設け、国や地域ごとの条件に沿って流通させています。プラットフォームの審査がそのまま法的なお墨付きになるわけではありませんが、世界的な大手プラットフォームが各国の規制を踏まえて販売を認めているものです。

では、銀行は何を理由に断っているのか。多くの場合、拒否の理由は公表も説明もされていない為、よく分かっていないのが現状でただ、当事者が口頭で説明を受けたケースでも、伝えられたのは「違法だから」ではなく、「成人向けコンテンツを扱っているから」という趣旨でした。合法に流通している作品の売上が、違法性とは別の基準で判断されている可能性があります。その基準が何なのかを明らかにすることが、まず必要だと考えています。


本来、銀行にとって取引は収益の源です。送金を受ければ手数料が入り、口座を使ってもらえれば取引も増える。普通に考えれば、断るより受けたほうが得なはずです。

それでも断るのは、損得の重さが釣り合っていないからだと私は見ています。個人や小さなサークルの海外送金から得られる手数料はわずかです。一方で、受け入れれば確認の手間がかかり、万が一のときの責任や評判への影響も銀行が負うことになります。受け入れた場合と比べると、断った場合の負担は小さいと言えます。

そこに、取引規定にある「公序良俗に反する取引」を制限する条項が重なります。成人向けコンテンツが公序良俗に反するとは限りません。それでも、「反するかもしれないものは、断っておいたほうが無難だ」という判断が働きやすい。海外送金の確認が厳しくなっている今は、なおさらでしょう。個々の判断はリスク管理として理解できるものです。それが積み重なった結果として、この問題が生じているのだと思います。


毎日膨大な取引を処理している銀行から見れば、成人向けゲームの売上の受取は、全体のごく一部にすぎないでしょう。個別に詳しく審査するコストが見合わないと判断されやすい面もあるでしょう。

一方でクリエイターにとっては、それが生計そのものです。長い制作期間をかけ、イラストレーターや声優への支払いを先に済ませ、得た売上で次の作品をつくる。その売上を受け取れないのに、税金はかかる。銀行にとっての「ごく一部」が、クリエイターにとっては事業を続けられるかどうかの問題になっています。

どちらの見方にも理由があります。この認識のずれを、事実をもとに関係者が共有することが、解決の出発点だと考えています。


課題は、銀行が慎重に審査すること自体ではありません。その判断の基準と、それが外から見えにくいことにあると考えています。

一つは、成人向けコンテンツを扱っていることを理由に謝絶されたという事例が、複数あることです。送金の確認で本来見るべきなのは、お金の出どころや流れに具体的なリスクがあるかどうかです。正規のプラットフォームから契約に基づいて支払われる売上なら、リスクは個別に評価できるはずです。作品のジャンルだけで一律に判断すると、取引そのもののリスクではなく、事業者の属性で判断することになりかねません。

もう一つは、担当者や銀行によって判断が揺らいでいるように見えることです。ある銀行では受け取れたのに、別の銀行では断られる。公序良俗の解釈や、販売プラットフォームへの理解が担当者によって違うのだとすれば、事業者は何を準備すればよいのか分かりません。予測できないこと自体が、事業にとって大きなリスクです。

そして、理由が示されず記録にも残りにくいため、銀行・行政・事業者のいずれにとっても、実態がつかみにくくなっています。


銀行は海外からの送金を受け付ける際、送金元や取引の目的を確認しています。これは、犯罪で得た資金の出どころを隠すマネー・ローンダリング(資金洗浄)や、テロ資金の流れを防ぐための対策(以下、マネロン対策)で、国際的にも各国の金融機関に求められているものです。海外送金は詐欺や資金洗浄に使われやすい経路でもあり、こうした確認は必要なことだと考えています。また銀行には取引相手を判断する裁量があり、拒否の理由を詳しく開示すれば審査をすり抜ける手がかりになる、という懸念も理解できます。

そのうえで求めたいのは、業種やジャンルだけで一律に断るのではなく、個別の取引のリスクに基づいて判断することです。そして、事業者が何を改善すればよいか分かる程度には理由や条件が示され、その判断が適切かどうかを行政が検証できる状態にすることです。

金融庁のマネロン・テロ資金供与対策ガイドラインも、マネロン対策を名目に合理的な理由なく取引を謝絶しないよう求めています。求めているのは特別扱いではなく、この考え方が現場で着実に運用されることです。


10月27日の意見交換で、金融庁からは、成人向けコンテンツを扱っているという理由だけで一律に取引を謝絶するのは適切ではない、という考え方が示されました。この問題に耳を傾けていただけたことを、心強く感じています。

一方で、金融庁が把握している関連の相談は、直近1年で1件程度とのことでした。金融庁の考え方と、当事者が経験している事例との間にどのような隔たりがあるのか。それを事実に基づいて確かめるためにも、具体的な事例が欠かせません。

同様の経験をされた方は、ぜひ金融庁の金融サービス利用者相談室に情報を寄せてください。書き方はミスティルテインさんの記事にまとまっています。一件一件の声が、問題の実態を示す何よりの材料になります。


最後に、この問題が表現の自由とどう関わるのかを書いておきます。

作品は、作られ、売られ、その売上が次の作品の資金になることで続いていきます。もし特定の種類の作品について、売上を受け取れない、口座を開けないということが続けば、クリエイターはその種類の作品をつくること自体をためらうようになるかもしれません。法律で禁じられていなくても、お金の流れが止まることで、結果としてどんな作品が世に出るかが左右されてしまうのです。

表現の自由は、本来は国が表現を制限することから守るための考え方です。デバンキングは民間の金融機関の判断であり、そのまま同じようには語れません。それでも、合法な表現が事実上つくりにくくなる状況が広がれば、表現の多様性にとっては似た影響を持ちうると考えています。表現の自由を守りたい立場から、私はこの点でもこの問題を見過ごせないと考えています。

これは、成人向けの作品が好きかどうかという話ではありません。今は成人向けコンテンツが対象でも、いずれ別のジャンルや業種が、同じ構図で金融サービスを利用しにくくなる可能性があります。金融はあらゆる事業活動の土台です。その土台に誰がアクセスできるかが、透明な基準ではなく個々の判断の積み重ねで決まっていくことには、慎重であるべきだと考えます。

事例が集まった段階で改めて金融庁と対話し、金融機関も含めた関係者で課題を共有しながら、解決策を探っていきたいと考えています。私自身も、引き続きこの問題を注視していきます。


最後に、この調査に協力してくださった皆さんに感謝します。

当事者として経験を公にし、情報提供の手順づくりまで担ってくださったミスティルテインさん。多くの事例を把握し、共にこの問題に取り組んでくださっているくりした善行さん。意見交換に応じてくださった金融庁の皆さん。そして、声を上げてくださったクリエイターの方々と、この問題を報じてくださったメディアの皆さんに、心からお礼を申し上げます。

免責事項
発信の主体
この解説ページは、小林修平が個人として作成し、発信するものです。所属するチームみらいの公式見解ではなく、党の政策や方針を示すものでもありません。
情報の時点
記載の内容は2026年11月1日時点で確認した情報にもとづいています。金融機関の対応や金融庁の指針、海外の制度は日々動いており、公開後の変化を反映していない場合があります。内容は予告なく変更、追記、削除することがあります。
正確性について
正確性と中立性に配慮して作成し、根拠とした資料は参考文献に示していますが、内容の正確さ、完全さ、最新性を保証するものではありません。個別の事例は報道と当事者の発信によるもので、金融機関の側の説明は含まれていません。
法律・税務の助言ではありません
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参考文献23件
  1. Guaranteeing Fair Banking for All Americans(米国大統領令、2025年8月7日)
  2. マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)(金融庁、2026年3月31日)
  3. 成人向けヒット作『ループトレイン』制作サークル、Steamのデバンキングや口座開設拒否の問題を議員・金融庁関係者に解説―過去には約1年半にわたり海外売上を受け取れず(Game*Spark、2026年10月28日)
  4. 数十万本ヒット成人向け『ヤリステメスブター』開発者、Steamからの売上を銀行に受け取り拒否されたことを明かす。今も続く「銀行による成人向けコンテンツの規制」【UPDATE】(Game*Spark、2026年8月5日)
  5. Steam全年齢向け百合ゲー、銀行からの入金拒否を受け発売延期。8月発売予定だった一般向けゲームなのに…相次ぐSteamゲームのデバンキング(Game*Spark、2026年8月12日)
  6. あなたの返信が、犯罪を防ぐ。(全国銀行協会)
  7. 成人向けゲームを海外パブリッシャー経由してSteamで販売したら日本への送金が国内銀行により停止された…注目される「銀行による成人向けコンテンツの規制」(Game*Spark、2026年4月16日)
  8. “デバンキング”で発売延期の百合ゲー『私たちフェイクマリッジ?』別口座で問題解決、制作再開へ―開発者が対処の経緯を報告(Game*Spark、2026年10月5日)
  9. 相次ぐSteam成人向け削除は「クレジット決済代行業者や銀行の要請によるもの」Valve、弊誌らに回答(Game*Spark、2025年7月19日)
  10. Payments and Sales Reporting FAQ(Valve、Steamworks ドキュメント)
  11. SWIFT(スイフト)とは?国際送金の仕組みをわかりやすく解説(三井住友フィナンシャルグループ DX-link、2025年10月30日更新)
  12. マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(金融庁、2026年3月31日改正)
  13. マネー・ローンダリング等及び金融犯罪対策の取組と課題(金融庁、2026年7月)
  14. 普通預金規定(三井住友銀行)※預金規定の文言の一例として
  15. 成人向けゲーム規制問題について、クレジットカードMastercard社が「ゲームプラットフォームに制限を求めたことはない」と声明(AUTOMATON、2025年8月2日)
  16. 【拡散希望】海外で販売したゲームの売上を銀行で受け取れない方へ(デバンキング問題)【ご協力ください】(Mistilteinn、Ci-en、2026年11月1日)
  17. マネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策の現状と課題(金融庁、2023年6月)
  18. 犯罪による収益の移転防止に関する法律(e-Gov 法令検索)
  19. 民法(e-Gov 法令検索)
  20. Millions of people and businesses protected against debanking(英国財務省、2025年4月28日)
  21. 金融サービス利用者相談室(金融庁)
  22. Agencies Issue Final Rule to Prohibit Use of Reputation Risk by Regulators(米国連邦預金保険公社、2026年4月7日)
  23. 全国銀行協会相談室・あっせん委員会(全国銀行協会)

※各資料の内容は2026年11月時点で確認したものです。